アンプやエフェクターのインピーダンスって何?

最近、ビジネス用語としてアジェンダとかバジェットとかエビデンスとか簡単に日本語にできる言葉が使われる場面がありますね。

僕はそういう言葉で煙に巻くのは好きじゃないです。日本語で言えばいいじゃないと思います。アンプやエフェクターの仕様にも、よく意味の分からない言葉があったりしますね。

では、例として実際に書かれているエフェクターの仕様からよく分らなそうな言葉を選んでみます。

規定入力レベル -20dBu
規定出力レベル -20dBu
入力インピーダンス 1MΩ
出力インピーダンス 1kΩ
推奨負荷インピーダンス 10kΩ以上

さあ、意味が分かりませんね。
音作り感覚派の人からすると、これほど無意味な情報もありません。

レベルってのは何となく信号の大きさってのが伝わってきそうなもんですが、それって具体的にどれぐらいなの?って感じです。ですが、レベルについては後日。
今回は、イメージさえし難いインピーダンスについて。

エフェクターの仕様に出てくるインピーダンスって何?

少し機材について詳しくなってくると、「ロー出し、ハイ受け」なんて言葉を聞いたり見たことがあるんじゃないでしょうか。これはインピーダンスの事を言っています。なぜそう言われるのかも後述します。

インピーダンスを知るには、まずはオームの法則のおさらいから

さあ、まずは小学校の理科の授業で習ったオームの法則のおさらいです。これは電気を考える際の基本中の基本です。

電圧:E (単位V)
電流:I (単位A)
抵抗:R (単位Ω)

E=I×R
I=E÷R
R=E÷I

1Ωの抵抗に電流が1A流れると1Vの電圧が発生する。
1Vの電圧を1Ωの抵抗に繋ぐと1Aの電流が流れる。
電圧が1Vで電流が1A流れているときの抵抗は1Ωである。

これを思い出してください。
インピーダンスの説明に必要になってきます。
「あ、お勉強系?めんどくさいな…」って方は、とりあえずブックマークだけしておいて、心の準備が出来てから改めてこの記事を読んでくださると幸いです。
きっと損にはならない内容ですので。

インピーダンスとは、[抵抗]のことですが…

さあ、ここから先を読む準備はOKですか?

ではインピーダンスの単位を見てみましょう。
Ωですね。
そうなんです。インピーダンスは抵抗なんです。

ΩΩΩ<な、なんだってー!!

ですよね。じゃあ抵抗って書いてよって思いますよね。
でもこれは「バジェット→予算」みたいなそういう簡単な話じゃないんです。

試しにエフェクターの入力インピーダンスをテスターで測ってみましょう。

おや?測れませんね。
テスターで測れるのは直流抵抗、インピーダンスはその抵抗とは違うんです。

じゃあお前誰なんだよ、インピーダンスさんよぉ。

かなりいろんなものを省略していますが、エフェクターの回路の入り口は概ねこのようになっています。
テスターで測れなくしている犯人はCと名付けられたコンデンサです。
(この子の仕事は脱線するので説明しません。カップリングコンデンサで検索してください。)

コンデンサは直流電流を通しません。つまり絶縁体です。
ですので、テスターでは測れません。

ですが、コンデンサは交流電流は通します。交流では導体なんですね。
このとき、エフェクターやアンプではRと名付けた抵抗は抵抗値のかなり高いもの(1MΩとか)が採用されます。
入力インピーダンスはこのRの抵抗値が書かれている場合がほとんどです。

お次は出力インピーダンスです。

エフェクターの出力部分の一般的な回路です。
この回路の場合、テスターで測ると抵抗値はR1+R2となります。

この場合、R1が100kΩ、R2が1kΩなんでしょう。
でも、スペックに書かれている出力インピーダンスはこれより低くなってます。
入力と同様にコンデンサがいるからです。
出力インピーダンスはR2の抵抗値が書かれている場合が多いです。

ピックアップのインピーダンスはどうなの?

で、お次はパッシブピックアップのインピーダンスです。
ピックアップのスペックとしてよく直流抵抗値が、記載されていますね。
シングルなら6kΩ~8kΩ、ハムバッカー(以下略、ハム)なら8kΩ~って感じのが多いです。
出力インピーダンスがこの程度であれば、「やれ、ハイインピーダンスだ」「やれ、ノイズに弱い」等と騒ぎ立てるほどのものではありませんが、実際には違います。

実際にはこのようになっています。
モデルごとの違いや個体差も大きいパーツですので意図して数字は入れませんでしたが、6kHzあたりで200kΩを超える場合が多いです。
なぜこうなるのかは大変長くなるので割愛します。簡単に言うとコイルだからです。

ここまでの解説では何となくしかインピーダンスの事が分かりませんね。
役者さんの名前と顔が分かった程度です。
これから彼が、どのような場面でどのような演技をするのか掘り下げていきましょう。

さあ、先程ハイインピーダンスという言葉を使いました。
これに対してローインピーダンスという言葉も使われます。
厳密な定義を僕は見たことがありませんが、パッシブピックアップから出力されるとハイインピーダンス、何らかの電子回路から出力されるとローインピーダンスとしても異論はないかと思います。

さあ上にも書いたようにパッシブピックアップの場合、周波数が高くなるにつれてインピーダンスも高くなっていきます。
これがどのような音の変化をもたらすのか考えてみましょう。

これは等価回路といって簡略化するとこういう風に考えられますねって図です。
ホントは少し違うんですけど、今回はこれで十分ですのでこれで行きます。

交流電流の場合、コンデンサの持つ抵抗は無視できるレベルですので無視しています。(一般的に、ここには無視できる程度になるような容量のコンデンサが採用されます。)
あと、計算が少々面倒になるので楽器のトーン回路は省略しています。
シールドケーブルも省略しています。

電圧源のインピーダンスは0Ωと考えます。

R1:ピックアップの出力インピーダンス
R2:楽器のボリュームポットの抵抗
R3:機器の入力インピーダンス

R3に発生している電圧が機器(アンプやエフェクター)の後段の回路により増幅されます。

1kHzでの動作を考えましょう。
計算しやすいので出力信号の電圧を1Vとしときますか。

1kHzでのR1を15kΩとしましょう。(大体そんなもんです。)

R2は、ギターではピックアップがシングルの場合は250kΩ、ハムの場合では500kΩのポットを使うのが一般的です。
今回は500kΩで考えます。

ではまずはR3が1MΩの場合で考えてみましょう。

まずはR2とR3の並列の合成抵抗を計算しなくてはなりません。
式はR2×R3÷(R2+R3)となります。
計算で求められた抵抗値をR23とでもしておきましょう

今回の場合、割りきれませんが概ね333kΩです。(ポットや抵抗の誤差があるのでこれでいいです。)

で、Outが何Vになるのか計算しましょうか。

E÷(R1+R23)×R23で計算できます。

大体0.957V(-0.38dB)ですね。

今度は5kHzでの挙動を計算しましょう。
5kHzでは出力インピーダンスが200kΩぐらいです。

R3が1MΩの場合では0.637V(-3.92dB)となります。

では今度はR3が100kΩの場合にはどうなるのかを計算します。(R1は先程と一緒です。)
R2とR3の合成抵抗は概ね83kΩとなります。

1kHzのときは0.847V(-1.44dB)ですね。

5kHzになったときには0.293V(-10.66dB)と、かなり落ちてしまっています。

ちなみにですが、R3が無限大の場合には、R23とした抵抗値がR2と同じになりますので、1kHzでは0.971V(-0.25dB)、5kHzでは0.714V(-2.92dB)です。
(これが今回考察した仕様での楽器の最大のポテンシャルです。)

これをR3が1MΩのときと比較すると1kHzでの差が0.13dB、5kHzでは1dBと、あまり大きな差はありません。

しかし、R3が100kΩのときでは1kHzで3.54dB、5kHzでは9.22dBの差があり、1kHz時の音量低下もありますが、なにより特に高音域の減衰がとても大きいです。

最初に繋ぐ機器の入力インピーダンスが音に多大な影響を与える

このようにパッシブの楽器では最初に繋ぐ機器の入力インピーダンスが音に多大な影響を与えます。
高い入力インピーダンスの機器では音はダイレクトに入力されます。

この性質が良い方向に利用されているケースもあります。
FuzzFaceやRangeMasterといったビンテージスタイルのファズやブースターなんかでは入力インピーダンスが低くなっており、パッシブの楽器を繋ぐと程よく高音が減衰し、キンキンとした耳障りな暴れ感が出にくくなっています。設計した人がこれを狙ったのかどうかは分かりませんが。

ちなみに電子回路からは低音域から高音域にかけてほぼ同じインピーダンスで出力されます。(回路により変えることはできますが。)
出力インピーダンスが1kHzで1kΩなら、5kHzでも概ね1kΩなんです。
ではR1が1kΩの場合も同様に計算してみましょう。

今回の計算ではR2は無視します。

ではまずはR3が1MΩのとき。
0.999V(-0.01dB)

R3が100kΩのとき。
0.99V(-0.09dB)

両方とも音量の低下がものすごく少ないです。
信号の電圧を、より低下させることなく伝達するには、出力インピーダンスを低く、入力インピーダンスを高くするといいとわかりますね。
このようなことから、「ロー出し、ハイ受け」が奨励されるわけです。

ノイズの観点からみたインピーダンスの考察

では今度はノイズの観点からインピーダンスを考えてみましょう。

今回考えるノイズは、ピックアップや配線、シールドケーブル等に乗るようなノイズになります。

先に電力の計算式を書いておきます。
電力:P (単位W)

P=E×I
E=P÷I
I=P÷E

これに抵抗を考慮した式に変形させます。(オームの法則の式を代入するだけです。)
今欲しいのはどれだけの電圧になるかだけです。

E=P÷(E÷R)

E=P×R÷E

E?=P×R
とまあこうなります。

これに使用する抵抗(R)は出力する機器の出力インピーダンスと、入力される機器の入力インピーダンスの並列の合成抵抗です。

では仮にノイズの電力を1mWとして考えてみましょう。(こんなに大きなノイズが乗るような環境は普通はありません。計算が楽だからこれにしただけです。)

パッシブピックアップの出力インピーダンスの高いところをとって200kΩ、ポットの抵抗500kΩ、入力インピーダンスを1MΩで考えてみましょう。
これらすべての並列抵抗は125kΩですね。

E?=1mW×125kΩ

E?=125です。
E=11.18V

まあ、これだけじゃ比較する物がありませんので、最初に例として取り上げたエフェクターの出力インピーダンス1kΩでの場合を考えましょう。
入力インピーダンス1MΩとの並列抵抗はほぼ1kΩです。

E?=1mW×1kΩ
E?=1
E=1V

11.18Vと1Vでは20.97dBもの音量差があります。
これがどのくらいかと言うと、よくあるクリーンブースターのツマミをフルテンにしてオンオフした時の音量差とだいたい一緒です。

このようなメカニズムで出力インピーダンスが低い信号はノイズに強くなっているわけです。

出力インピーダンスが1kΩで、入力インピーダンスが推奨負荷インピーダンスの下限の10kΩではどれぐらいなるのか参考までに考えましょう。
並列抵抗が約909Ωとなります。

E?=1mW×909Ω
E?=0.909
E=0.953V

1MΩ時と比較して0.41dBですので、ノイズの点ではさほど大きくは変わりませんね。

さてここからはちょっとアドバンスな話をしてみましょうか。

インピーダンスマッチングの話です。
そんな言葉、初めて聞いたって方も多いかもしれません。

しかし、実はギタリストで真空管アンプを使用している人はこれをやっていますよ。きっとあなたも。
8Ωのキャビネットは、8Ωのアウトプットに繋いでますよね?(そうだと言ってください。そうしていないと最悪の場合、アンプが壊れちゃいます。)

この目的は効率よくスピーカーを鳴らすためです。
さあ、これがどういう理屈か考えてみます。

ミクロな視点で見れば出力には必ず抵抗(インピーダンスを含む広義的な意味での抵抗)があります。
理論上の0Ωは幻です。何かを通ればその物質の持つ抵抗の影響を受けます。接点や導線さえもが抵抗です。
まあ、今回は出力インピーダンスというマクロな抵抗を考えるので無視しますが。

では計算行ってみましょう。

今回は下記の条件で行きます。
出力電圧:15V
出力インピーダンス:10Ω
負荷抵抗(スピーカーとか仕事をしてほしい部品の抵抗):5Ω、10Ω、20Ω

まずは負荷抵抗が5Ωの場合

回路全体に流れる抵抗は15V÷(10Ω+5Ω)=1A
負荷抵抗に発生する電圧は1A×5Ω=5V
負荷抵抗の消費電力は5V×1A=5W

電力を全て音に変えられる理想的なスピーカー(そんなものはありませんが)であれば5Wが音になります。
出力インピーダンス側では同様の計算で求められますが、こちらは10Wの電力がただの熱になります。

今度はちょっと10Ωは飛ばして、20Ωの場合の計算をしてみましょう。
これはロー出しハイ受けです。
上で計算した時は減衰も少なくていい感じでしたね。

15V÷(10Ω+20Ω)=0.5A
0.5A×20Ω=10V
10V×0.5A=5W

おや?負荷抵抗での消費電力は先程と一緒になりましたね。
出力インピーダンス側では2.5Wです。お、こちらはだいぶ減ってますね。

では10Ωで計算してみましょう。

15V÷(10Ω+10Ω)=0.75A
0.75A×10Ω=7.5V
7.5V×0.75A=5.625W

一番高い消費電力となりましたね。
出力インピーダンス側の発熱も5.625Wです。

このように負荷抵抗を出力インピーダンスと同じにすると、一番効率よく負荷に力が伝わるんです。

出力インピーダンスより負荷抵抗が低くなると、電力は無駄になるし、負荷へきちんと力が伝わらない。
逆に負荷抵抗が高くなると、電力の無駄は無くなるけど、こちらもまた力が伝わらない。

実はトランジスタアンプの場合、出力インピーダンスはスピーカーのインピーダンスより低くなっている場合がほとんどです。
そうすればアンプ側の発熱が少なくて済みます。
トランジスタは熱に弱い部品なのでそのような配慮が必要なためそうなってます。

コンデンサーとトランスの役割とは

真空管アンプの場合は、真空管とスピーカーの間にトランスという大きな部品が入っています。
トランジスタアンプもコンデンサが入ってたりしますが、その仕事には違いがあります。

どちらにも直流電流をスピーカーに流さないという重要な仕事があります。

出力部分のコンデンサの仕事はほぼそれだけです。

トランスはそれだけではありません。

真空管の回路ではなかなかどうしてもインピーダンスが高くなり、スピーカーをしっかりと駆動するのが難しくなっています。(オーディオの真空管アンプではトランスを使用しない回路もありますが、ギターアンプでは見たことありません。)
そこで、トランスが出力インピーダンスを変換し、スピーカーに効率よく電力を伝えているのです。
このトランスを使用する回路は非常に厄介で、インピーダンスを概ね合わせてやらないと、トランス自体や真空管に負担がかかり故障します。
例によってメカニズムは省略しますが、メーカーが認めていない乱暴な使用を許容できるほど丈夫な部品は使われていない場合がほとんどなので、きちんと取説を読んで正しい使い方をしてあげましょう。
真空管でも多少当てはまりますが、モノによってはトランスは非常に高価です。
トランスが煙を吐いて昇天する様を眺めながら後悔をする前にきちんとしたつなぎ方にしましょう。

インピーダンスまとめ

さて、長々とインピーダンスについて書いてきましたが、正直このあとがきまでどれほどの人が読んでくれているのか不安です。
インピーダンスというものを理解していると、バッファの有用性なんかが良く分かり、エフェクターの繋ぐ順番とかいろいろと効果的に実践に活かせたりします。

今これを読んでチンプンカンプンでも、気にしていたらきっとハッと理解できる時が来るはずです。
僕もそうでした。
この記事でインピーダンスのもやもやした部分が少しでも取り除けていたら幸いです。

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